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長崎市丸山遊廓

※1930年(昭和5年)発行の「全国遊郭案内」より
長崎市丸山遊廓
長崎市丸山遊廓は長崎市丸山町と寄合町に在つて、長崎縣長崎驛から市内電車で、思案橋終點へ下車すれば宜しい。此の思案橋を渡ると直ぐ石灰町で、直ぐ丸山町に続いて居る。
「江戸の女郎に長崎の衣装を着せて京都の揚屋で遊び度い」
と昔から謡はれて、四大遊廓の中でも、長崎の衣裳は特に華美であつたものらしく、又遊び方も可成豪奢を極めた處らしい。井原西鶴は「長崎に丸山と云ふ處なくば、上方の金銀無事に歸宅すべし、海上の氣遺ひの他、いつ時を知らぬ戀風恐し」と云つて居る様に、長崎へ行つた人で、恐らく此の丸山へ足を踏み入れて來ぬ人は無いだらう。もしあつたとしたならば、其の人は女か子供位なものだらう。其れ程有名であり、又其れ程一種獨特の氣分の漂つて居る處なのだ。
松平長七郎、頼山陽、平賀源內、蜀山人、吉田松陰、高杉晋作、坂本龍馬、井上馨、大隈重信等は何れも此處の美妓の酌する魔酒に陶酔した人々だつた。支那人と日本遊女の戀。蘭人と日本傾城の情話、等々數々の甘いローマンスは皆茲で醸されたのだった。丸山遊廓は市の東方に当って、一寸した高臺に成つて居るので、附近の人々は「山」と呼んで居る。ゆるい傾斜地に、大小の妓樓がずらりと二十二軒も軒を並べて、料理店、藝妓置屋、等の紅燈、青燈が點在して居る中から、絃歌や、艶めかしいさんざめきが流れて來る邊りは、眞に日本の花街らしい気分がする。
目下貸座敷は二十二軒あって、娼妓は約二百人居る。店は寫眞制と陰店制の両制あって、娼妓は全部居稼ぎ制である。遊興は時間制又は仕切制で費用は一時間遊びが一圓二三十錢位、宵から翌朝迄の一泊は四圓見當で、臺の物は別である。

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長崎県長崎市丸山町



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