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新地遊廓

※1930年(昭和5年)発行の「全国遊郭案内」より
新地遊廓
新地遊廓には貸座敷が四十三軒あつて娼妓は約三百人居る。何れも山口縣、福岡、熊本縣等の女が多く玉も比較的善いのが揃って居る。右三廓共店は寫眞店と陰店の兩制で、娼妓は全部居稼ぎ制で送り込みはやらない。遊興は何れも時間制、通し花制で廻しは取らない。費用は一時間遊びが一圓五十錢位、全晝は四圓五十錢位で、全夜一泊が六圓見當である臺の物は附かない。

下ノ關市
下ノ關市は瀬戸内海の西口を扼して、交通上軍事上椻要の位置を占めた要港で周防の上ノ關、中ノ關に對して着けた名稱である。賴山陽が馬關と雅號を着けた事があるので、日清談判が茲で行はれた事を「馬關條約」と云つて居る。昔から有名な要港で、今は釜山との連絡船を出る。硯、雲丹、鯨尾羽毛等が產物だ。壇の海は平家全滅の場所である事は天下周知の事實であるが、同時に平家蟹の産地である事も有名だ。又茲からは「小平家」と云ふ鯛に似た形で、上に白い斑のある魚が漁れる。男は蟹と成って永久に源氏を呪ひ女は魚と成つて久遠に怨むのだと云ふ傳説がある。事實、平家蟹も小平家も、他では絶對にとれないから不思議だ。下ノ關には、豊前町遊廓と裏町遊廓と、新地遊廊との三個所に遊廓がある。云ひ傳へに依ると、平家滅亡の際に生き残った女房達が、其の日の糧を得る爲めに春を賣ったのが初まりで、今日の盛大を成したものだとされて居る。
紅石山の麓には官幣中社赤間宮があって、古戦場が一望の下に見渡し得る處がある。例祭は毎年十月七日で、此の日には毎年市の遊女達が盛装をして茲に參詣をする事に成つて居る。此れは帝の忌日毎に參詣をした平家の女房達の風習が、今尚形ちの變つたものと成って残って居るものだと言はれて居る。

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新地遊廓の地図

山口県下関市新地西町



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